
複製画と聞くと、みなさんはどのようなイメージを持ちますか?複製された作品には価値がないと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、複製画にはその目的や作成手法が複数あり、買取業者から意外な値段で買い取ってもらえるケースが実際に存在します。
この記事では、複製画についての理解を深めていただくため、オリジナル原画との違いや市場価値、保管方法などを詳しく解説します。
複製画の基礎知識
複製画とは、作家合意の下に、オリジナルの絵画を模写または印刷技術を用いて再現した作品を指します。主な目的は、オリジナル作品の美しさや魅力を多くの人々に広めることです。
複製画には、技術的手法によって作成される方法がいくつかあります。最も一般的なのは、印刷技術を用いるもので、高品質な専用プリンターを使って細かいディテールまで再現します。
また、手描きによる複製画もあり、熟練した画家がオリジナルを模写することで、オリジナル作品に近いタッチや質感を再現している場合があります。
複製画と原画の違い
複製画と原画の違いを説明していきますね。
制作過程の違い
- 原画:
画家が独自のアイデアや感情を表現するために一から創作した作品であり、作品には作者の個人的なスタイルや意図が色濃く反映される。 - 複製画:
原画を基にして制作されるため、多くの場合、オリジナルの意図を忠実に再現することが求められる。作品は、作家監修のもとに版画工房を通して複製されることが多い。
目的と価格の違い
- 原画:
一般的にコレクターズアイテムとしての価値が高く、市場での取引金額も高額になることが多い。 - 複製画:
装飾用や贈り物として人気があり、オリジナルの作品を多数の人々に手の届く価格で提供できるため、手の届く価格帯で販売されている。
このように、両者には、制作方法や価値、利用目的においても明確な違いがあります。
複製画の技法とは
複製画の技法にはいくつかの種類があり、それぞれに特色があります。作成方法は、手書き・版画・機械印刷が主な複製手法です。
この章では、複製する方法についてご紹介します。
リトグラフ(版画)
リトグラフは、石版画とも呼ばれ、平坦な石版を用いて絵画を複製する技法です。この方法は、19世紀初頭に発明され、以来、多く用いられてきました。
リトグラフの制作過程では、まず石版上に描画し、化学薬品を使用して描かれた部分だけにインクが付くように加工します。インクを付けた後、紙に圧力を加えることで、丁寧に転写されます。
この方法は、細部まで忠実に再現された作品を生み出せることが特徴です。
リトグラフは、同じ版を何度か使って印刷する方法ですが、作れる枚数には限りがあります。そのため、リトグラフはアートコレクションとしての価値が高く、多くのコレクターから人気があります。
シルクスクリーン(版画)
シルクスクリーンは、複製画が作られる際に多く用いられている技法です。この技法では、網目状のスクリーン(通常は絹やナイロン)を使用してインクを転写します。
原理としては、インクが網目を通過し、シルクスクリーン上に描かれたデザインを再現します。
シルクスクリーンの最大のメリットは、鮮やかな色彩と劣化しにくい耐久性のあるものを作り出せることです。同じデザインであれば、一度に多くの複製品を作成できるため、コストパフォーマンスに優れています。
ジクレー(印刷技術)
ジクレーは、近年多く用いられているデジタル技術を用いた印刷方法の一つです。この技法では、高精細なインクジェットプリンターを使用し、画像を再現します。
原理としては、インクジェットプリンターのヘッドから、版画用紙やキャンバスなどの素材に直接インクを吹き付けます。この際、色の濃淡やインクの量を調整することで、シルクスクリーンでは難しい微妙な色彩や質感を表現することができます。
ジクレー印刷の主なメリットは、豊かな色彩がしっかりと再現できる点と、耐光性や耐水性に優れているので、長期間美しさを保てることができる点です。
木版画
木版画は、最も古い複製技法の一つで、木の板に絵柄を彫り込んで制作する方法です。この技法は、日本の浮世絵などで広く知られ、芸術性の高い複製画を生み出してきました。
木版画の制作過程では、まず木板に下絵を描き、彫刻刀で不要な部分を彫り落とします。その後、凸になった部分にインクや絵の具を付け、和紙などの紙に刷り込みます。多色刷りの場合は、色ごとに異なる版木を作り、重ね刷りを行います。
木版画には手作業による独特の風合いがあり、木目の自然な表情が作品に与える温かみが特徴です。
銅版画
銅版画は、金属板に細かい線や階調を表現できる精密な複製技法で、エッチングやドライポイントなどが代表的な例です。15世紀のヨーロッパで発展し、その繊細な表現力から芸術作品の複製に重宝されてきました。
銅版画の制作工程では、銅板に腐食液や彫刻工具を使って溝を作り、そこにインクを詰めます。表面を丁寧に拭き取った後、湿らせた紙を重ねて、プレス機で強い圧力をかけて刷ります。溝に詰められたインクが紙に転写されることで、緻密な線や豊かな階調表現が可能となります。
版を重ねるごとに微妙な違いが生まれるため、一枚一枚に個性が宿るのも銅版画の魅力です。
複製画であってもアートコレクターにとっては投資価値があるとされています。
以上のような複製方法で作られた複製画が市場で販売されています。
制作方法の希少性や製作数の多さなどから、複製画でも価値の付くものは多くあります。
複製方法を理解しておくメリット3選
作品の価値を正しく判断できる
複製方法を理解することで、作品の希少性や品質、価値を正しく判断できます。例えば、作品の細かいディテールまで再現できるリトグラフやシルクスクリーンといった技法は人気が高く、比較的多く使用される技法であることが分かります。
購入やコレクションの選択が的確になる
アート作品を購入する際、目的や予算に合った選択ができるようになります。たとえば、オリジナルに近い複製画を求めるか、装飾目的で手軽な印刷を選ぶかといった判断ができます。
投資や資産価値としての知識が役立つ
アート作品を資産として考える場合、複製技法や枚数の制限を理解していれば、それがたとえ複製画でも投資価値を見極めることができます。
例えば著名な画家の、枚数の限られた希少な複製画は、将来的に価値が上がる可能性があります。
より価値のつく複製画とは?
複製画の中でも、有名画家の作品には価値がつく傾向があります。
例えば、モネやゴッホといった画家の作品は、それまでには存在しなかった独自の技法や色彩感覚が表現の幅を広げたことで有名です。
影響力のある絵画が複製化される場合、質の高い技術を駆使して本物の美しさが忠実に再現されていることが、買取市場では最も評価されます。
これは、複製の完成度が高ければ高いほど、鑑賞者はオリジナルに近い感動を得ることができるためです。
また、シリアルナンバーやサインなどが入っている複製画の場合、さらに希少価値があると評価されることがあります。
複製画の購入と販売方法
絵画の購入方法
複製画の購入方法には、まずアートギャラリーやオンラインショップを利用することが一般的です。信頼できる店舗を選ぶことで、より質の高い複製画を手に入れることができます。
また、現代のアーティストであれば、公式サイトで販売されている場合もあるのでチェックしましょう。
絵画を売る方法
複製画を販売する際は、絵画の買取業者に査定を依頼して買取ってもらうか、フリマサイトなどで個人販売する方法があります。
個人販売には、以下のような3つのデメリットが考えられます。
- 適正な価格がつけづらい
- 商品の説明に注意を払わないと個人間で問題になる可能性がある
- 梱包・発送をすべて自分で手配しなくてはならない
一方、信頼できる買取業者に査定を依頼し、その場で買取ってもらえれば、より正しい価格で売ることができ、契約に同意した時点で複製画の管理をまかせられます。
複製画をきれいに保管する方法
複製画を長期間美しい状態で保つためには、適切な保管方法が重要です。この章では、複製画を守るための保管方法のコツについて解説します。
直射日光を避ける
複製画を飾る場所として、直射日光が当たる場所は避けましょう。日光の紫外線が画材にダメージを与えて、色褪せや劣化の原因となる場合があります。
特にジクレーやシルクスクリーンなどの印刷技術を使用した作品は、長時間の直射日光にさらされると色彩が変色しやすいため、直射日光を避ける場所に飾ることをお勧めします。
温度と湿度に気を付ける
作品は温度や湿度の変化に敏感です。特に湿度が高すぎるとカビが発生したり、湿気で絵画の素材が膨張することがあります。
手作業で描かれている複製画であれば、管理は本物の絵画と変わりありません。そのため、乾燥しすぎると絵画の紙や絵具が収縮や膨張してしまう可能性があり、低すぎると湿気が吸収され、絵画がひび割れることがあります。
最適な保存環境は、室温20~25度、湿度50~60%程度が一般的に適切とされています。
適切な額縁を使用する
購入時の額縁が簡易的な物だった場合、額縁を丈夫なものにすることも、絵の状態を美しく保つコツのひとつです。額縁にはアクリルガラスやUVカットのガラスを使用すると、紫外線から絵画を守り、より長持ちさせることができます。
また、額縁の裏には適切なマットや裏板を使い、作品が傷つかないように保護するのもおすすめです。
保管場所の選定
もし複製画を飾らずに保管する場合は、作品を直立した状態で保管できる場所を選びましょう。
寝かせて保管すると、画面に圧力がかかり傷がつくことがあります。
定期的な状態確認
複製画をしまって保管している場合は、定期的に状態を確認することも大切です。例えば、額縁の状態をチェックして、ガラスが破損していないか、裏面が湿気を含んでいないか確認します。
また、複製画を長期間保管する場合には、年に一回程度は取り出して状態を確認したり、必要であれば清掃を行ったりしましょう。適切な保管方法を守ることで、複製画の美しさを長く保つことができます。
まとめ
複製画は、オリジナル作品と同じように魅力的で、価値を感じることができる絵画のひとつです。
しかし、複製画の価値は一律ではなく、流行や作品の状態によっても変動します。
たとえば、特定のアーティストや作品が人気を集めている時期には、需要に応じて価格が上がることもあります。
複製画の価値は作品の状態や保存状態も大きな影響を与えるため、所有している場合は保管方法に注意を払い、大切に扱いましょう。
以上を踏まえて、自分の所有する、あるいはこれから購入したい複製画がどのような価値を持っているか、また今後の取引や保存方法についてのヒントとしてご活用ください。