今回紹介するお品物は淡々斎の懐紙『誰がために』です。
裏千家十四代家元・淡々斎(たんたんさい)は、茶道具の意匠や和歌に深い造詣を持ち、多くの作品や好み物を残しました。淡々斎は「誰が袖棚」や「誰が袖蒔絵平棗」など、「誰が袖」に関する茶道具を好んで用いたことで知られています。
「誰が袖」とは、袖口から漂う香りを通じて、離れた人への思いを馳せる情景を表現した、日本の古典的な美しい表現です。淡々斎がこの言葉を好んだ背景には、茶の湯における風流や雅を大切にする心があったと考えられます。
懐紙は茶席での和歌の披露や書状のやり取りなどに使われ、茶人の美意識や教養を示す大切な道具です。もし淡々斎が『誰がために』という言葉を懐紙に用いたとすれば、それは茶席における趣向や客人への心遣いを表現するものだったのかもしれません。
懐紙の詩幅作品であり、軸先を一閑張師・飛来一閑が仕上げていたことを考慮しまして今回の評価となりました。