向田商店は、1818年創業の石川県金沢市に所在する企業であり、現在のムコダの前身となる老舗です。同社は創業当初、加賀藩御用達の金銀箔製造を主軸として事業を展開していました。
今回のお品物は、純銀で製作され、持ち手部分には象牙が使用された一品です。このお品物は、同社が社名を変更した1952年よりも前に制作されたものであると判断されます。そのため、銀特有の上品な質感に加え、象牙の持ち手がシンプルながらも上品な印象を与え、実用性も兼ね備えた非常に魅力的な逸品です。
近年、貴金属の価格は数年前に比べて大幅に高騰していますが、このようなお品物は、素材そのものの価値以上に、作品としての価値が評価されるケースが多く見受けられます。
ただし、今回のお品物は純銀製の特性上、キズやへこみが生じやすい性質があります。具体的には、注ぎ口の反対側に大きなへこみが見られるほか、蓋の裏側に目立つひっかき傷があります。このため、評価はやや低めとなりました。しかしながら、持ち手部分に象牙が使用されているお品物は非常に珍しいため、総合的な価値を考慮した今回の評価となっています。