こちらは、板谷波山 『彩磁銀杏散文花瓶』になります。
板谷波山は、陶芸家として初めて文化勲章を受章するなどの功績を残し、日本近代陶芸の先駆者として活躍した人物です。
1872年に茨城県下館の旧家に生まれました。1887年、東京美術学校彫刻科に入学し、岡倉天心や高村光雲の指導を受けました。
卒業後は学校教員として働いていましたが、1903年に教員を退職、陶芸の道へ進みました。1908年、日本美術協会展での入賞を皮切りに、日本美術協会展一等賞金牌など数々の受賞を経て、帝室技芸員に任命されるなど近代日本の芸術界において最高位と呼べる座に到達します。
波山作品の特徴として「葆光釉(ほこうゆう)」と呼ばれる、波山独自の釉を用いていることがあげられます。絵付けを施したあとにかけるこの釉は、色絵の色調を柔らかなものに変化させ、より絵画的な表現を可能にしました。
今回ご紹介するお品物は、氏の作品の中でも大型の花瓶にります。上が青、下が白のツートンカラーになっており、題目の通り銀杏の葉が立体的にデザインされた作品となっています。
銀杏の葉の葉脈は細かな凹凸に釉薬が入り込む濃淡で表現されており、波山の繊細な表現力を感じます。そうでありながらも、繊細で柔らかな色彩を得意とした氏において青と白がはっきりと分かれているのは珍しく、ディティールの繊細さと色彩の力強さが嚙み合った作品といえるでしょう。
今回の作品は箱が合わせ箱でしたが、上述の通り大型で大変貴重なものであったこと等からこちらの評価額となりました。