「呼継」とは、割れたり欠けたりした陶器に、まったく別の陶器の破片を継ぎ足して修復する「金継」の一種です。
金継が、割れた単一の陶器を修復して元の姿に近づけつつ、新たな風格を与える技術であるのに対し、呼継では、たとえば破損した織部焼の陶器に黄瀬戸や黒茶碗の破片を組み合わせて修復します。
呼継の作品では、桃山時代の作家不明の陶器が修復されて販売されているものがよく見られます。一方で、鈴木五郎の作品は、あらかじめ呼継が施されており、「人がやらないことをやる」という鈴木氏ならではの特徴やセンスが表現された特別な一品となっています。
鈴木五郎氏による呼継は、一度素焼きしたものを分解し、それぞれの破片に異なる釉薬を施して焼成した後、再び組み合わせることで完成されています。その結果、異素材を組み合わせながらも一つの作品として違和感なくまとまった、独創的な美しさが生み出されています。
今回の評価ポイントとして、共箱などの付属品が揃っていること、作品自体の状態が非常に良好であること、そしてこの技法による唯一無二の価値を持つ作品であることが挙げられます。