東山魁夷 作 リトグラフ『霧立つ山湖』

今回は、東山魁夷のリトグラフ作品『霧立つ山湖』をお譲り頂きました。

今作は東山魁夷の中でも特に人気の高いドイツの「ヒンター湖」を描いた図柄です。
東山独自の幻想的な世界感と写実性が両立された大変素晴らしい作品ですが、彼とドイツの関係性を知ればより作品への理解が深まります。

東山は若かりし頃にベルリンへ留学し、その後も、他の国と比べてドイツに訪れた回数は非常に多いです。個展も何度か開いており、ドイツを大変気に入っていたことが分かります。

同じく風景画を専門とし、ドイツ・ロマン主義を代表する画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの作品に彼は大きな影響を受けました。
表面的な自然の美しさではなく、自然そのものに対する信仰や憧憬、そういった価値観の下で生まれた美しさというのがフリードリヒの描いたものです。

東山の作品もまた、どれを見ても自然への並々ならぬ思いというのが伝わってきます。そこには、彼自身が肌で感じてきたドイツ独自の芸術的価値観、精神性が宿っていると言えるでしょう。

今回の作品はリトグラフ作品ですが、東山魁夷の作品には他にも原画、工藝画、復刻画など複数の種類があり、同じ題材の作品でも大きく評価が変動します。

今回は、保存状態がとても良好であったことと作家の人気性を考慮しまして、こちらの評価とさせて頂きました。