こちらは、向面延雄 作『庭園蒔絵香炉』でございます。
向面延雄は輪島塗の蒔絵師であり、本作も輪島塗作品となります。
輪島塗は石川県輪島市で生産される漆器であり、最高級漆器として有名です。
その特徴は輪島の地の粉が使用されているということにあり、地の粉を下地に用いることで木地が補強され、通常の漆器と比べ大変丈夫になります。また、加飾の芸術性が高いことで美術品としての人気があります。
本作もまた、その芸術性が強く表れた香炉作品なのではないでしょうか。
全体の模様は庭園がテーマとなっており、池のほとりに草花が咲き、そこに桜の舞う詫び錆びある庭が演出されております。細かな絵付だけでなく、螺鈿などを使用した立体的な造形も魅力的で、どこを切り取っても美しさのあるお品物です。
今回は装飾性の高い蒔絵香炉作品であったこと、火屋が銀製であったこと、専用の箱が付随していたことを合わせて考慮しましてこちらの評価とさせていただきました。