三谷吾一は昭和から平成にかけて活躍した漆芸家です。
石川県輪島市の塗師の家庭に生まれ、14歳の時には沈金師である蕨舞洲に師事しました。
「沈金」とは漆器の装飾技法のひとつで、塗面に模様を彫った後に金銀箔や粉などを塗り込んで模様を作る技法です。
沈金は基本単色でしたが、創意工夫の過程で三谷は様々な色彩を生み出し、詩情あふれる色彩表現は「三谷沈金」と呼ばれるようになりました。
本作においても、貝殻一つ一つの色彩の違いに三谷の構成力と表現力が表れています。こちらの『潮風』は1988年に日本芸術院賞を受賞している作品で、まさしく三谷の代表作と言える漆芸画です。絵画のような自由さを持ちながら、沈金独特のコントラストが見事な作品ですね。
今回は作家の日本芸術賞受賞作であること、漆芸画作品の人気等を考慮しましてこちらの評価とさせていただきました。