今回ご紹介するお品物は、河井 寛次郎 作「草花図花瓶」でございます。
河井寛次郎は濱田庄司、柳宗悦とともに民芸運動を推進したことで有名です。
また中国古陶磁の再現に力を入れ、数多くの作品を世に生み出しております。
今回の作品「草花図壺」は寛次郎がよく好んで取り入れた色調の一つです。
こちらは白化粧の上から、中国で古くから伝わる辰砂、呉須を用いて草花を描いております。角や丸み部分には鉄釉で絵付けを行うことで作品に立体感が生まれております。中国の辰砂や呉須はもう少し色味が濃いのが特徴ですが、寛次郎は優しく少し落ち着いた印象の仕上がりとなっております。
次に造形に注目してみましょう。
丸みは柔らかく、口元はしっかりと形作られており力強さを感じることができます。寛次郎先生は絵付けでなく、造形に対してもこだわりを持って作陶を行っておりました。しっかりと形作られた部分は轆轤を使用せずに時間をかけて丁寧に制作されております。
改めてお品物に目を向け、下から順に鑑賞してみましょう。丸みを帯びた柔らかい雰囲気が上に登っていくにつれて、徐々に力強い雰囲気に変わっていきます。私はこちらの作品を見てまるで人間のような作品だと思いました。
人間は穏やかな時もあれば、激しい怒りや悲しみを感じる時もあります。
そのような人間が本来持つ、自由な感情表現を寛次郎先生は作品に表したかったのではないでしょうか。
メリハリがある大変素敵なお品物でございました。