今回お客様からお譲りいただきましたお品物は十一代 中村宗哲 作『玩具蒔絵 黒大棗』です。
中村宗哲は千家十職と呼ばれる三千家御用達の塗師でございます。 また中村家は400年の歴史があり、当初は蒔絵を巧みに施した家具などを制作しておりましたが、明治以降は棗や菓子盆などの製作が増え、茶道具の塗師専業となっていきました。今回紹介する十一代中村宗哲はその中でも特に多数の名品を制作した代でございます。それでは今回お譲り頂いたお品物の魅力に迫っていきましょう。
こちらの黒大棗は搔合塗と呼ばれる技法で仕上げられております。搔合塗は素地に渋柿の果実から搾り取った液である柿渋と油絵具等に使われる弁柄を混ぜ合わせた物で塗り、その上から透漆を塗って仕上げられる技法です。ここまでだと落ち着いた作品に仕上がりますが、そこに相対的で色鮮やかな玩具蒔絵が加わることで一気に目を引く可愛らしいお品物に生まれ変わります。保存状態も非常によい素晴らしいお品物をお持ち頂きありがとうございました。