今回ご紹介するお品物はこちら。河井寛次郎 作『海鼡鉢』でございます。
河井寛次郎は、陶芸作家として活動しながらも彫刻や書など広く芸術活動に携わった方として有名です。
初期は中国古陶磁にならった作品を制作し、作品に「鐘渓窯」という銘を刻んでおりましたが、中期に入ると民藝運動の中心メンバーとなり日用の美を追求するようになります。この頃から、作品に自身の銘を刻まなくなりました。
本作も作品の裏側に銘が無いことから、中期以降の作品であることが窺えます。
「海鼡」は「なまこ」と読み、その名の通りなまこのような色味の「海鼠釉」が使われたお品物となります。この独特の色味は、中国宋時代の名窯・釣窯の紫紅釉を思わせ、寛次郎のアイディアの源泉の深さと起こす技術の高さをうかがうことができます。
今回は鉢のお品物となりますが、共箱に入っていたこと、ヒビや割れ等も無く、良い状態でお譲りいただきましたことを考慮し、こちらの評価とさせていただきました。