上村松篁 『紅葉』

上村松篁は京都出身の日本画家で、母に美人画で作品が有名な上村松園を持ち、親子二代にわたり魅力的な日本画作品を描いています。

上村松篁の作品は鳥を描いた作品が多いことが特徴的で、鳥を描く上で強いこだわりがあり日本国内だけではなく海外へ足を運び、鳥の生活を観察した経験もあります。

また鳥を描く上で松篁が大事にした物の一つに「植物」があります。ある意味”引き立て役”ともとれる植物にこそ作家の”思い”や”業”が汲み取れるからです。

その植物に焦点を当てたのが本作で、タイトルにもある「紅葉」は「こうよう」と「もみじ」の2種類の読み方が出来ます。一般的なイメージの赤く色づいた葉ではないことから、意味としては前者よりも後者の方にフォーカスされているように感じます。
また色づき始めたモミジには色の悪くなった箇所も見られ、作品自体にリアリティを持たせると共に、だんだん寒くなっていく中で少しずつ葉が色づき、散っていくという季節の移ろいを楽しみにしているようにも感じられます。

こちらは得意とする花鳥画ではないことから少し人気が落ちてしまいますが、原画作品であることや、作家の画力・視点など目を見張るものがあり、状態も良く共シールや共箱も揃っていることから評価を付けさせていただきました。