こちらは、常滑焼作家・吉川雪堂による茶注でございます。
高さ約10cmの急須で、本体と蓋部分には精緻に彫られた小倉百人一首の図柄が施されています。一方には百人一首の文字が細密に刻まれ、もう一方には百人の歌人が繊細に描かれています。蓋には「小倉百人一首」の文字が彫られ、その周囲には精巧な装飾が施されており、非常に格調高い仕上がりとなっています。
この急須は雪堂によって制作され、図柄の彫刻は兄である吉川壷堂が手掛けています。そのため、本作品は雪堂と壷堂による合作となります。彫りのない作品も存在しますが、雪堂の作品の多くは壷堂による彫刻が施されており、その精巧さが特徴です。
蓋と本体の接合部は丸みを帯び、注ぎ口にはわずかな反りが施されており、水切れの良さを追求した作りとなっています。全体的に滑らかな曲線が用いられており、手に馴染みやすく、実用性にも優れた逸品です。実際にご使用いただくのも一興かと思われます。
付属の木箱は、保管時の経年劣化により上部に若干の変色やヤケが見られます。また、各部に小さな傷が確認されますが、作品自体は非常に良好な状態で、未使用品に近いコンディションであることを考慮し、今回の評価とさせていただきました。