西岡小十は「古唐津の神様」と謳われた人物です。
作陶を始めたのは52歳であり、公募展などに一切出品せずに活動しておりました。それでも「神様」と呼ばれるほどに評価を受けるのは、桃山時代の古唐津の復元に始まる圧倒的な技量があったからです。
絵斑唐津(えまだらからつ)・梅華皮(かいらぎ)などをはじめとした古典技法は、時代を超えて西岡子十の代名詞として親しまれております。
本作の「黒唐津」とは釉薬成分のバランスによって黒~茶褐色を呈した作品を指します。黒色の中にも茶褐色・黄褐色を呈する複雑な色彩があり、一概に「黒」と言い切れない深い色調が黒唐津の特徴です。
本作も濃厚な茶褐色が作品の温かみ・深みとして表れており、円熟した味わいが感じられます。
今回は人気の高い黒唐津の茶碗作品でした。より人気のある”椀型”ではなく”筒型”であったこと、そのほか本品や共箱の状態も考慮し、こちらの評価となっております。