篠田桃紅 作 リトグラフ 『SURF』

こちらは篠田桃紅のリトグラフ作品『SURF』になります。

篠田桃紅(本名・満洲子)は、100歳を越えてもなお活躍し続けた抽象画家です。手掛ける作品は、墨で描かれる水墨の抽象画といった斬新な作風が特徴であり、国内外問わず大変人気の高い作家です。

今作は『SURF』と題するように、勢いのある波の流れにサーフボードが運ばれているような、そんな軽やかさとさわやかな雰囲気を放つ作品です。

作品の左部分を見ると、枝分かれした赤色の線が入っています。これは篠田本人が朱を筆入れしたもので、このように刷った版画の上から絵を描き加える方法を手彩（てさい）または手彩色（てさいしき）と呼びます。

この手彩は、版画を多く手掛ける桃紅の趣向が凝らされた、白と黒の空間に奥行きを生み出すものと考えられます。
桃紅作品は、金や銀、朱といったモノクロと対照的な明るく絢爛な色がよく使われ、その手彩の入った作品は評価も高くなる傾向がございます。

また、同じタイトルの作品でもこの手彩がなかったり、または別の色が用いられていたりと、その少しの違いで作品の印象が変わることも面白さの一つです。
加わった色一つで鑑賞者の想像力をかき立てるのも、抽象画の醍醐味と言えるでしょう。

篠田桃紅の作品もそうですが、抽象画は見る人によって感じるものが違い、幻想的でミステリアスな画風が特徴的です。現在、絵画の世界ではこういった抽象画が流行しているため、有名な方の抽象画になりますと高い評価となる場合が多くございます。
そういった理由に加え、今回は前述の手彩の入ったお品物になりますので、こちらの評価とさせて頂きました。